地球PF運用ブログ

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FIRE後悔記事の感想

「早期リタイア「FIRE」を目指して結局後悔する理由」という記事を読みました。

toyokeizai.net

堀江貴文さんと山崎元さんが、FIREに対して批判的に論じています。

FIREとは「Financial Independence, Retire Early」の略で、経済的に自立した上で早期リタリアする、という考え方です。私が資産の構築をスタートした20年前には、まだFIREという言葉はありませんでした。しかし、目標としていた状態はまさにFIREです。現時点で「FIRE」の前半である「FI」(Financial Independence)は達成しています。後半の「RE」(Retire Early)は、タイミングを含めてどうしようか思案中です。

この記事、FIREを検討する層には全く響かないだろうなと思いました。論点になっている層(FIREを志向する人たち)と論者それぞれの考え方が、ここまで噛み合っていない記事も珍しいと思います。こうなってしまう原因はおそらく、堀江さんと山崎さんがこの社会における少数の成功者である一方、私のようにFIREを志す層の大半はそうではない、という属性の違いだと思います。

堀江さんは「そんなに仕事がつまらないのだろうか」と疑問を投げかけます。やりたい事があるなら今やれば良いじゃん、と。こう言えちゃう人生、羨ましいですね。堀江さんは優秀でバイタリティもあるので、実際にそうやって生きて来たのでしょう。

しかし、そんなことができる人間は極少数で、大半は「生活のために」仕事をしていると思います。楽しい云々とは別の次元で、生きていくために嫌な仕事であっても我慢して働いています。嫌々働かなくても生きていけるのであれば、それに越したことはありません。だからFIREを切望します。

堀江さんのように仕事が楽しくて仕方ないなら、そりゃFIREなんて全く考えないでしょうね。楽しいことをして、お金を貰えるんですから。FIREを志向する人たちとは、立ち位置が根本的に違います。彼の目には、仕事でうつ病になった私など、全くわけが分からない人間として映るのかもしれません。

この堀江さんの問いかけに、山崎さんも同意しています。「仕事が楽しい」2人が、FIREについてこれ以上何を論じるんだろう、と思いながら続きを読みました。

山崎さんは別の論点として、人的資本の問題を挙げています。FIREを目指して節約すると人的資本への投資が少なくなり、FIRE達成後に「稼げない人間」「つまらない人間」になってしまう、という問題です。これも言わんとしていることは分かるんですけど、何か違和感を覚えます。

まず、FIREを達成しているのであれば資本所得だけで生活できています。したがって、労働所得を「稼げない人間」になったとしても問題ありません。むしろ本当の問題は、この資本主義の社会で「資本家」の側に回れず、いつまでも「労働者」として働かざるを得ない状態に陥ることです。個人的には「労働所得しか稼げない人間」になってしまう方がより重大な問題だと思いますが、記事の話から脱線してしまうので、ここで止めます。

次に、お金をかけないと「つまらない人間」になる、というのは少々危険な価値観だと思います。そうであれば日本より貧乏な、たとえば発展途上国の人たちは皆つまらない人間なのでしょうか。そんなことないでしょう。記事では人的資本を上げる教育投資の例として「美味しいものを食べる」「旅行に出かける」「映画を観る」等を挙げていますが、これらが面白い人間になるための投資になっているのか良く分かりません。

また、つまらない人間の例として「ワインのリストから自分の気分に合うものを選べない、あるいはアラカルトメニューから注文できないような人」を挙げていました。確かにスマートではないかもしれませんが、これをもって「つまらない人間」と言えるのか微妙です。皮肉を言いたいわけではないですが、人的資本を積み上げても、良いワインを選べる程度の「つまらない人間」になるだけなのか、と思ってしまいます。

記事の最後に「悠々自適に生活してボケるより、何か活動していた方が良い」という文脈で、堀江さんの母親のことが書いてあります。年金をもらいながらボランティア活動をしていて、それに「やりがい」を感じていると。これは素晴らしいと思います。私もボランティアには少々関心があります。

しかしこの状態は、むしろFIREの好例になっていないでしょうか。母親は、年金では生活できないから「仕事」をしているのではありません。年金で生活できる、つまり労働する必要が無い状態で、やりがいのある「ボランティア」を選択して活動しています。年金を資本所得に置き換えたら、これはFIREそのものです。FIREは、経済的に自立して「仕事」をリタイアし、後はやりたいことをやる、という生き方だからです。

全体として、立場上FIREの考え方を想像できない、あるいは想像する必要もない「社会の強者」が、FIREについてあれこれ的外れなことを論じている、へんてこな記事だと思いました。

 

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