毎日新聞の世論調査で、日銀の金融緩和政策に対して「見直すべきだ」との回答が過半数を占めました。「最近生活が苦しいのは円安のせい、その円安は日銀の政策のせいらしい、日銀は政策を変えるべき」といった考え方でしょうか。気持ちは分からなくもありませんが、私は緩和を継続すべきと思います。もし日銀がいま緩和から引き締めに転じれば、日本経済は壊滅的な打撃を受けるでしょう。
ブログで度々「円安を止めたいなら日銀も利上げするしかない」と書いています。
しかし、では実際に日銀は利上げできるのか、利上げすべきなのか、と言われれば、「今はできないだろうし、すべきでもない」と思います。
昨今の円安は、各国の中央銀行と日銀の金融政策の違いから生じています。FRBをはじめとした先進各国の中央銀行は、インフレを抑えるために利上げを中心とした金融引き締め政策を実施しています。逆に、日銀だけは金融緩和を続けています。この両者の政策の違いから生じる内外金利差が昨今の円安の主要因です。よって円安を止めたいのであれば、金利差を解消すべく日銀も利上げするしかありません。実際、最近よく実施されている為替介入では円安トレンドが全く変わっていません。介入は対症療法に過ぎず、金利差は依然として残っているからです。
だからと言って日銀が利上げに踏み切れば、日本経済は大変なことになると思います。まず、住宅ローンの金利が上がります。民間の住宅ローン利用者のうち、8割以上は変動金利タイプを選択しています。低金利の今でさえ住宅ローン破綻者が年々増えています。ここで金利が上がれば、その数は間違いなく激増するでしょう。また、企業の借入金の金利も上がるため、中小企業がバタバタと倒産します。失業者数が増大し、日本の景気はどん底まで落ちてしまいかねません。
そもそも金融政策といった高度な問題について、私を含めた素人の世論を調査・公表する意味があるのでしょうか。回答者の大半は、金融政策転換の影響なんて大して考えていないと思います。私もあれこれ書いていますが、はっきり言って駄文です。餅は餅屋に任せておけば良いと思っています。
日銀が世論に迎合して政策を変えることはないと思います。しかし、世論に突き動かされた政治家の圧力を受ける可能性はあります。いわゆる「中央銀行の独立性」が、いま実質的に生きているのかどうか分かりません。その意味で少々おそろしい世論調査だと思いました。日銀の職員には、是非ともセントラルバンカーとしての矜持を貫いてほしいと思います。
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