先日、NHKスペシャル「新・幕末史 グローバル・ヒストリー」を2週連続で視聴しました。第1集は「幕府vs列強 全面戦争の危機」、第2集は「戊辰戦争 狙われた日本」。
激動の時代「幕末」は、小説、映画、ドラマ、マンガ等でよく取り上げられます。最近も金ローで「るろうに剣心」が放送されていましたね。これらのフィクション作品はいずれも、幕末を日本国内に限定した内戦の時代として描きます。しかし近年、当時の国内情勢に諸外国が大きく関わっていたことが明らかになりました。番組では、幕末の時代を大きな世界史の中に位置付けて、新たな視点から描き出していました。
当時は大英帝国をはじめとする列強が、東アジアの権益を狙って覇権争いを繰り広げていた時代です。こうした世界情勢で各国が目を付けたのが、地政学的に重要な位置に存在している日本でした。まず、ロシアが対馬に海軍基地を作ろうと動き出します。幕府はイギリスの力を借りてこれを阻止。しかし今度はイギリスが日本を掌握しようと影響力を増していきます。
イギリスは最初から日本に対する「全面戦争計画」を立てていました。小栗はイギリスの狙いを事前に見抜き、どこの国にも肩入れせずに日本を守る戦略を主張しました。しかしこれが上に通らず、まんまとイギリスの思い通りになってしまいました。その後も小栗は日本を守ろうと、イギリスの外交官と緊迫した交渉を重ねていきます。小栗忠順は、これまであまり注目されてこなかった幕末のヒーローと言えるかもしれません。
第2集の舞台は「戊辰戦争」。
ここでも列強が暗躍しまくっていて、日本に大きく関わっています。プロイセン(後のドイツ)は、北海道の植民地化計画を遂行するため、会津藩にスパイを送り込んでいました。私は幕末史にプロイセンが関わっていたなんて全く知らなかったので非常に驚きました。
また、フランスは幕府を、イギリスは新政府を支援して、戊辰戦争はさながら列強の代理戦争の様相を呈していきます。情勢をリードするのはやはりイギリスです。「局外中立」を活用した巧みな外交を展開し、新政府が勝つように仕向けていきます。後の歴史は、私たちが知っているとおりです。
番組は従来の歴史観とは全く異なった視点から、世界史の中で幕末を再発見する構成になっていて、非常に見応えがありました。それにしても、イギリスの外交力の高さには驚かされます。日本は結局、イギリスの狙い通りの国に生まれ変わってしまいました。
また、番組は日本の幕末にスポットを当てていましたが、ある戦争に、実は様々な国が様々な思惑で関わっているという構造は、昔も今も世界中で同じなのでしょう。おそらくそれは、昨今のロシアによるウクライナ侵略についても当てはまるものと思います。
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