NHKスペシャル 混迷の世紀「第3回 岐路に立つ“民主主義”~権威主義拡大はなぜ~」を視聴しました。欧米型の自由民主主義に疑問を呈する国や地域が増えています。番組冒頭で「民主主義の度合い」という調査結果が紹介されていました。この調査では、ある国や地域が「公正な選挙」「人権の尊重」「言論の自由」「法の支配」といった民主主義の価値観に沿っていれば民主的、沿っていなければ非民主的とみなします。調査結果は、民主的な国と地域は60、非民主的な方は119、ということでした。今や民主主義は劣勢なのです。
要因の1つは、アメリカの求心力低下です。「カラー革命」や「アラブの春」で、もともと非民主的だった国々が続々と民主化していくかに見えました。しかし定着しませんでした。識者によると、民主主義を定着させるのは難しく、国内に不安が充満している状態ではまず無理だそうです。民主主義は今後、権威主義的な国家から存在意義を問われると予想されています。
ロシアがウクライナ侵攻を開始して以降、EUは民主主義陣営の結束を呼びかけました。しかし最前線に立たされているポーランドでは不満が噴出しています。かつて同国は民主主義を歓迎したものの、市場競争によって格差が拡大してしまいました。そのため、近年ではEUに反発していました。それに加えて今回、経済制裁に対するロシアの報復で燃料代が高騰し、ポーランドは更に経済的な犠牲を負っています。ポーランドとEUの対立はますます深まってしまいました。
またEU加盟国のハンガリーは、単独でロシアに接近してガスを安く仕入れました。これが国民に支持されています。ハンガリーの女性がインタビューに対して「(民主主義より)最優先すべきは家族の暮らし」と答えていました。無理もありません。オルバン政権は権威主義的な傾向を強め、不支持者の言論を弾圧しています。同国では今、報道機関の約8割が政権寄りのメディアだそうです。
こうした動きの中で見逃せないのが中国の動向です。民主主義陣営は2008年のリーマン・ショックで大きく後退しました。一方で躍進した中国は、「一帯一路」を旗印にアフリカやアジアに対して経済支援を展開し、各国への影響力を強めていきました。ハンガリーのオルバン首相も、この展開に注目して権威主義的な傾向を強めていったと分析されています。
アメリカと中国は価値観が真っ向から対立しています。今後両国の対立が激化すれば、日本はその影響を避けられないでしょう。民主主義の動向に注目していきたいと思います。
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