NHKスペシャル 混迷の世紀「第6回 “情報戦” ロシアVS.ウクライナ ~知られざる攻防」を視聴しました。ロシアによるウクライナ侵攻に端を発した戦争が依然として継続中です。両者は物理的な戦闘の水面下で、熾烈な情報戦を展開してきました。番組は両陣営の情報工作について取り上げたものです。その情報戦は予想以上の攻防で、なかなか見応えがありました。
ロシアは自国の正当性をアピールしようと、フェイク情報を織り交ぜて様々なプロパガンダを仕掛けてきました。また、ウクライナ国民の士気を下げる試みも盛んです。偽ゼレンスキー大統領が降伏を呼びかける動画も一時話題になりましたね。あれはAIを活用した「ディープフェイク」という技術で作られた動画だそうです。
一方、ウクライナは欧米各国から軍事支援を引き出すために、各国の広告代理店と契約して情報戦を進めてきました。ゼレンスキー大統領を前面に出して「勇敢さ」をアピールするキャンペーンを展開します。一時期、色々な媒体に「Be Brave Like Ukraine」という文言が載っていました。これもキャンペーンの一環です。
キャンペーンの一翼を担ったのはアメリカの広告代理店だそうです。欧米各国は当初、ロシアとの全面衝突を恐れて軍事支援に消極的でした。しかし、ウクライナ政府から資金提供を受けたロビー企業が各国議員に働きかけ、やがて多くの国がウクライナへの軍事支援に名乗りを上げるようになりました。これによって、現在ウクライナが予想外の善戦を見せているのは周知のとおりです。情報戦はまさに戦況そのものを左右することが分かります。
番組で特に印象的だったのは、現代の情報戦の主戦場がSNS、とりわけtwitterであることです。しかもターゲットは、私たち一般ユーザです。ウクライナは、上記と並行して「ロシアのエネルギーを輸入させない」キャンペーンを展開します。一方、ロシアは欧州各国、特にドイツ国民に対して「エネルギー危機」を煽ります。
twitter上では、ある時期に突然「ロシア支持」「プーチン支持」のハッシュタグが登場し、瞬く間に拡散されたそうです。そのために何百もの偽アカウントが作成されており、それらのアカウントの顔画像はAIで生成された偽物だったことが判明しました。偽物といっても、見た目には実在の人間の顔写真そのものです。
現在プロパガンダは欧米以外にも拡散し、世界分断の一因になってしまっています。SNSでは事実かどうかは関係なく、むしろ事実ではない情報の方が拡散力を持つ傾向にあるそうです。
番組では、インターネットは善意的にも悪意的にも用いられる、と締め括られていました。私は昨年9月にtwitterを始めましたが、いわゆるフェイク情報を見破る自信がありません。何とも恐ろしい時代に生きているなと思いました。
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