NHKスペシャルで「混迷の世紀」という大型シリーズがスタートしました。個人的に期待大です。昨日放送された初回タイトルは「混迷の世紀 プロローグ “プーチンの戦争”世界はどこに向かうのか」。ロシアが始めた侵略戦争によって、安全保障体制は根本から転換を迫られ、経済も民主主義も危機に瀕しています。初回では、安全保障、グローバル経済、民主主義の3テーマに分けて状況を整理していました。侵略戦争をきっかけに世界が今どういった状況に陥ってしまっているのか、全体を俯瞰できる番組構成になっていたと思います。
安全保障の面では、各国が現行体制の見直しに着手しています。スウェーデンは防衛費を倍増させると共に、これまで200年間守ってきた中立の立場を転換してNATO加盟を目指しています。NATOは中国にも言及。今後はアメリカ陣営と中国陣営に大きく分かれて、両者が対立する構造が予想されています。アメリカが「世界の警察官」を事実上辞めた今、日本の安全保障体制も影響を免れません。
グローバル経済の面では、この度の戦争でエネルギーやモノの動きが止まっています。現在、食料輸出国のうち22か国が輸出をストップしているそうです。穀物価格は世界的に急騰し、食料品の値上げが止まりません。またロシアは自国資源を武器に、各国に直接揺さぶりをかけています。プーチンは先日突然、日本企業も参画している「サハリン2」の資産をロシア企業に無償譲渡するように命じる大統領令に署名しました。グローバル経済は行き詰まり、経済的な第2の冷戦まで予想されています。
民主主義の面では、いわゆる欧米型見主主義が帰路に立たされています。ロシア国内の言論弾圧は依然進行中。プーチンは、ウクライナのオレンジ革命や他のロシア領諸国の民主化を、すべてアメリカがバックで操っていると認識しているようです。着々と全体主義国家への道を歩んでいます。ハンガリーではロシア寄りのオルバン政権が、ロシアからエネルギーを安く仕入れて国民の支持を集めています。一方で不支持者に対しては言論を弾圧しています。また、同国ではEUへの不信感が高まっているそうです。EU加盟で豊かになるかと思っていたら、逆に市場競争に巻き込まれてしまったからです。ある調査では、現在、民主的な国や地域よりも非民主的な国の方がずっと多いそうです。
このように初回から重厚な内容で、今後のシリーズ展開が気になります。3つのテーマのうち、このブログ的にはグローバル経済が最も関連しています。しかし個人的には、安全保障に一番関心があります。安全な環境が確保されていなければ、投資どころではありません。今のウクライナの状況を見ていると本当にそう思います。すぐ近くに爆弾が落ちて来るような状況で「地球PFは先週に比べて…」なんて言っていられるはずがありません。
NHKスペシャル「混迷の世紀」。骨太の大型シリーズになることを期待しています。
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