地球PF運用ブログ

2億円の「地球ポートフォリオ」で地球全体の資産を運用する氷河期リーマンのブログ

「人財」と言うならBSに計上してほしい

20年前の研修時代、先輩から「人材」と「人財」の違いについて教わりました。人を大切にする会社は、社員を単なる人材ではなく人財として扱う、みたいな話です。うちの会社は昔から「人を大切にします」アピールに余念がないので、中の人も割とこういう思考に染まっています。では実際のところ、弊社は人を大切にしているでしょうか。20年強の勤務経験を基に言えば、すみません、コメントを差し控えさせていただきます。

この「人財」という表現、一部の経営者が社員を大切に扱っているとアピールする際に使いがちです。「わが社の人材は財産、つまり人財だ」というわけですね。

この表現を見る度に思うことがあります。本当に従業員を財産、人財だと思っているなら、その会社のバランスシート(以下、BS)に人財が計上されて然るべきです。一般に会社の財産である預金や設備は、BSの「資産の部」に計上されています。しかし、人財は資産に計上されていません。ではどこに現れるのかというと、損益計算書(以下、PL)の「費用」です。社長が「人材」と言おうが「人財」と言おうが、実際のところ従業員は「資産」ではなく「費用」として扱われています。

ただし、昨今は無形資産としての「人的資本」が注目されています。人的資本は人財の概念に近いでしょう。いずれは人財が無形資産としてBSの「資産の部」に計上される日が来るのかもしれません。なお先ほど、従業員はPLの費用として現れる、と書きましたが、最近はBSの「負債の部」にも一部計上されています(退職給付債務)。あくまで今日の財務諸表では一般に、従業員は費用か負債であって、資産としては認識されていません。

私は会計学の専門家ではありませんが、もし会社が従業員をBSに計上するとしたら、それはおそらく資産にも負債にも現れるでしょう。従業員が会社にもたらす労働の総量の割引現在価値が資産となり、会社が従業員に支払う総給料(退職金含む)の割引現在価値が負債になる、といったところでしょうか。そして、原理的に「資産>負債」の関係となり、その差額が「純資産」として計上されるはずです。なぜなら、そうでなければ会社は従業員を雇う意味がないからです。会社の目的は利益を上げること、ひいては純資産を増やすことです。その手段として従業員を雇っているのだから、会社にとって従業員の存在は原理的に純資産の増加に繋がります。

ちなみに、従業員本人のBSには、上記をそっくりそのまま反転した形で資産と負債が計上されます。つまり「資産<負債」の関係となり、その差額が「純負債」として計上されます。誰かの資産は誰かの負債なので、会社と従業員の両BSの関係から、必然的にこうなります。要するに、従業員は給料以上に働いて会社に貢献しなければならない、という暗黙の了解がBS上で「見える化」されます。この会社と従業員の関係については、姉妹サイトの方で詳述していますので、ご興味がありましたらそちらをご参照ください。

 

お金と労働と地球株 - 2-7. 労働のピンハネ

出展: お金と労働と地球株

 

もし会社が人財をちゃんとBSに計上すれば、上記のとおり会社が人財から純資産を得ている構造が明るみに出ます。それは即ち、労働者は本質的に純負債を抱えている存在だ、という理解に繋がります。資本主義経済における労働者という存在がどういったものか、あらためてBS上に現れてしまいます。それは一部の人にとって非常に不都合でしょう。そういうわけで、いつか人財がBSに計上される日が来るかも分かりませんが、その時に「ちゃんと」計上されることはないだろうと思っています。

ところで、人財というか人的資本が会社のBSに計上されると、地球PFにとっては大変ありがたいです。地球PFは「地球全体の資産を保有する」ことを目指しています。しかし前回の記事でも触れたとおり、現状、地球PFでは人的資本を保有することができません。

chikyu-pf.hatenablog.com

 

ところが、会社が人的資本の資産面と負債面、その差額としての純資産をちゃんと計上するようになれば、地球株を通じて大量の人的資本まで間接的に保有できることになります。さすがに全地球人ではない、つまり会社に雇用されていない人々の潜在的な人的資本にまでは及びませんが、それでも大変な進化と言えます。望みは薄いと思いますけど、会計学の更なる発展に期待したいところです。

 

【姉妹サイト】

お金と労働と地球株
~無能が30代で資産1億円を達成した方法~

 

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