先日メタバースに関する記事を書きました。NHKのドキュメント番組の感想です。
それの続きというか、先日書き切れなかったことを書きたいと思います。
番組内で、メタバースを始めとした仮想世界は物理世界と違って平等、といった意見が紹介されていました。
「サンドボックス」というゲームがあります。ゲーム内では誰もが簡単にアイテムを作成でき、それらを売買できます。ゲームにはNFTが取り入られていて、仮想的な土地すらも取引の対象だそうです。NFTとは、固有の価値を持ったデジタルデータです。そこではユーザ全員が利益を得られるため、平等な世界なのだと言います。
また、メタバース上の決済システムを手がける企業はこう言います。メタバース上の商品はすべてNFTであり、現在のAmazonのような独占は不可能になるのだと。それどころか、今後メタバース上の取引は国家の通貨を及びかす存在になる、とまで言っていました。
これは本当でしょうか。個人的には、仮想世界における格差はおそらく物理世界と基本的に変わらないし、むしろ更に拡がるのではないかと思いました。
確かに仮想世界では、物理世界の勝者(例:Amazon)と敗者が入れ替わるかもしれません。しかしそれだけの話ではないでしょうか。たとえ仮想世界であっても、多数の利用者が多数の商取引を繰り返した果てには、極少数の勝者と大多数の敗者が生まれることになるはずです。この構造は、現在の物理世界と全く同じです。また、仮想世界内の競争はおそらく物理世界よりも更に自由度が高いので、格差拡大のスピードも物理世界を上回ると思います。
通貨の話も少々怪しいです。物理世界のお金は、各国の中央銀行が独占的に供給しています。これに対して、仮想通貨(暗号資産)が登場して来ました。当初は「国家が管理しない通貨」として大変もてはやされました。しかし、仮想通貨は完全に投機の対象と化しており、その価値は全く安定していません。仮想通貨が法定通貨に成り代わるのは、今の状況を見る限りちょっと無理ではないかと思います。まして仮想世界における仮想の通貨などが、本当に重要な地位を占めるようになるのか疑問です。
平等な世界は人類の夢です。しかし、共産主義は結局のところ実現されませんでした。物理世界だろうと仮想世界だろうと、それは夢物語に過ぎないのかもしれません。
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