先月イギリスは大変な事態に陥りました。トラス英政権は大規模な減税計画を発表。すると、通貨ポンドが暴落して対ドルで過去最安値を更新し、併せて英国債も急落しました。イングランド銀行は慌てて英国債を買い入れ、トラス政権も所得税の減税計画を引き下げました。計画撤回によって、イギリスはとりあえず急場を凌げた恰好です。この事例から、投資家は各国政府の財政悪化にとても敏感であることが分かります。
翻って日本の債務状況はどうでしょうか。日本政府は1255兆円、対GDP比で263%(2021年、IMF推定値)という巨額の債務を抱えています。対GDP比で世界第2位です。ちなみに1位はベネズエラで307%。先月大騒ぎになったイギリスは95%に過ぎません。数年前に財政破綻したギリシャの政府債務でさえ193.3%で、日本よりも低い数字です。
それでは、なぜ日本政府は破綻しないのでしょうか。それは諸外国と異なり、円建ての国債が、ほとんど日本国内で消化されているからです。日本国債を買っているのはほぼ日本人なので、日本政府は外国に対して借金がほとんどありません。この状況は、時々サザエさん一家になぞらえて「マスオさんがサザエさんからお金を借りているようなもの」と言われたりします。その意味では、確かに破綻しようが無いように見えます。
また、ユーロ圏のギリシャは独自の金融政策を取れませんが、独自の通貨を持つ日本は自由に金融政策を行えます。債務を減らそうと思えば、私たちにとっては迷惑なことですが、増税すれば事足ります。最悪の場合、日銀がお金を刷って国債を償還してしまえば良いです。日銀の国債直接引き受けは財政法で禁じられていますが、日本では既にこれに近いことが行われています。
これらは「日本が破綻しない根拠」として良く言われるものですが、本当なのでしょうか。確かに形式的には破綻しないのでしょう。しかし増税すれば、もちろん民間部門が苦むことになります。一方、日銀による国債償還などしようものなら、それこそハイパーインフレになりかねません。つまり形式的には破綻しなくても、極端なインフレと通貨安によって実質的に破綻する可能性はあると思います。
日本が今後も円建ての国債のみを発行し、日本国債が日本国内で消化され続ける限り、確かに日本はギリシャのようにはならないでしょう。しかし、非常に可能性は小さいとは言え、ジンバブエのようになるパターンはあり得ると思っています。
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