政府は5日、社会保障改革の工程素案を公表しました。そこには、金融資産も加味した負担を検討する、との項目が盛り込まれています。高齢者の中には「所得は少なくても資産は多い」という人も居ます。今後はそういう人たちに一定の負担をしてもらおうという考え方です。
今後議論を呼びそうな内容です。応能負担の強化は仕方ない面がある一方、強い反対も予想されます。何しろ頑張って老後の資産を貯めた人は、より大きな負担を強いられるわけです。意地悪な言い方をすれば、逆に老後の資産形成など考えてこなかった人は相対的に恩恵を受けます。
イソップ寓話「アリとキリギリス」を思い出します。アリは冬に備えて、夏のうちに頑張って食べ物を集めています。一方、キリギリスは陽気に歌って遊んで暮らしています。キリギリスは、夏にせっせと働いているアリの姿をバカにして笑い飛ばします。「冬の事は冬が来てから考えれば良いのさ」と。そして冬が到来すると、キリギリスは食べ物がなくて困窮します。キリギリスはアリに救いを求めるも、助けてもらえませんでした。この話の教訓は、怠けていると後で痛い目に会いますよ、といったところでしょうか。
しかし、童話と現実は異なります。童話の世界とは異なり、この人間社会には富の再分配を担う政府が存在しています。政府の工程素案を見れば、アリの生き方は本当にバカだと言わざるを得ません。キリギリスの生き方が正解ということになります。童話の教訓は現実世界では通用しません。せっせと資産系形に励んでも後で取られるだけ、報われませんよ、というのが現実世界の教訓となりそうです。キリギリス風に言えば「老後の事は老後が来てから考えれば良いのさ」ですかね。
フィクションはともかくとして、実際に二重課税の問題もあります。一般に個人の金融資産は、納税後のフローを蓄積した結果としてのストックです。その過程で既に所得税を納めており、税金を支払った残りをせっせと溜め込んだものです。そのストックに対して更に課税するのは二重課税であり、筋が通りません。少々大袈裟ですけど、財産権の不可侵にも抵触しそうな危うい改革案だと思います。
とはいえ、政府がやるといったら実現するのでしょうね。現在、現預金には特に課税されません。しかし、この現預金を土地や建物に換えると固定資産税が発生します。固定資産税があるのに金融資産税が無いのは変ではないか、という論理も、これはこれで筋が通っています。まあ増税の理屈など、これまでどおり何とでもなるでしょう。
私はかねてより金融資産課税を怖れてきました。
いつかそうなるだろうと危惧していましたが、思ったより早く実現しそうで残念です。
私はこれまでアリとして生きてきました。ようやく準備が整い、満を持して数か月後にFIREします。今後は蓄積してきた資産の収入で生活していこうと思っていた矢先にこの素案です。非常に痛手です。少しはキリギリスを見習って、日本のためにお金を使いなさいという天啓なのかもしれません。
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