地球PF運用ブログ

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預金は民間銀行が発行するお金

お金は「現金」と「預金」の2種類に分かれます。さらに現金は、100円玉などの「貨幣(硬貨)」と、1万円札などの「紙幣(銀行券)」に分かれます。

これらのお金は、日本では誰が発行しているのでしょうか。なんとなく、お金はすべて日銀が発行しているかのように思われがちです。しかし実際には、お金の種別ごとに発行主体が異なります。それぞれのお金の発行元は以下のとおりです。

 

<お金の発行元>

  • 政府:貨幣を発行
  • 日銀:紙幣を発行
  • 民間銀行:預金を発行

 

この中で、預金を発行しているのは民間銀行だということを知らない人は結構多いのではないでしょうか。預金は日銀ではなく、みずほ銀行三菱UFJ銀行などの民間銀行が発行しているお金です。

先日、信用創造について2つの対立した考え方(万年筆マネーと又貸し説)がある旨の記事を書きました。

chikyu-pf.hatenablog.com

両者は対立していますが、いずれも「民間銀行の貸出で預金が増える」という結論は共通しています。そのプロセスについて見解の相違があるだけです。その意味で、そもそも「民間銀行が預金を発行している」という事実を知らなければ、上記の記事は全く意味が分からないかもしれません。ややマニアックな記事でした。

そこで今日は、民間銀行がどのように預金を発行しているのか、について書きたいと思います。最初に結論を言うと、民間銀行は「貸出」によって預金を発行しています。一般に「貸す」とは、既に持っている何かを他人に使わせることを意味します。ところが民間銀行の「貸出」では、その時点では存在していない預金をその場で発行します。この点が常識では考えにくいため、銀行貸出のプロセスについて各所で度々議論になっています。

一般に「民間銀行は誰かから集めた預金を他の誰かに貸している」と考えられています。しかし、これは典型的な誤解であり、事実はその逆です。むしろ民間銀行は、貸出の際に新たな預金を作り出しています。この種の議論でよく「では民間銀行は貸し出すお金をどこから調達しているのか」という問いがあります。答えは「どこからも調達しておらず、貸出の際に預金口座の数字を増やすだけでお金を発生させている」となります(参照:お金と労働と地球株 1-1. お金が生まれるとき )。

 

出典:お金と労働と地球株 1-1. お金が生まれるとき

 

なかなか受け入れ難い事実だと思いますが、誰かが民間銀行からお金を借りることで、この世界に新たな預金がもたらされます。これは銀行だけが行使できる「信用創造」(または「預金創造」)という機能であり、こうして生み出される預金を俗に「万年筆マネー」と言います。通帳に万年筆で数字を書き込むだけでお金が生まれるという事実から、1963年にジェームス・トービンという経済学者がそう命名しました。なお前回の記事でも触れましたが、現代の銀行業務では万年筆ではなくキーボードで数字を打ち込んでいるので、万年筆マネーに代わって「キーストロークマネー」とも言われます。

民間銀行は保有している資産(現金や準備預金)を超える額の預金を貸し出すことが可能であり、実際にそうしています。手持ちのお金を貸すのではなく、貸出において新たなお金を作り出しているので、その発行制限は貸出先の信用力に依存します。ただし、預金者から引き出し(預金→現金)の要求があれば、民間銀行はそれに応じる義務があります。そのため、貸し出した預金の一定割合の現金(あるいは準備預金)を中央銀行に預ける必要があります。この制度を「準備預金制度」と言い、その割合を「準備率」と言います。日本の準備率は概ね1%程度です。つまり民間銀行は、手持ちのお金(現金+準備預金)の大体100倍くらいのお金(預金)を貸し出していることになります。

この銀行貸出、会計上はどのように処理されるのでしょうか。以下のようになります。

 

<銀行貸出の会計処理>

  • 民間銀行: 貸付金 / 預金
  • 借りた人: 預金 / 借入金

 

ここで注意したいのは、民間銀行にとって預金は「負債」だということです。私たちにとって預金はもちろん資産ですが、銀行にっては逆なのです。銀行にとって預金は負債なので、そもそも一般的な意味でいうところの「貸す」ことは最初から出来ません。資産なら貸すことはできても、負債を貸すことなど出来ないからです。

万年筆マネーに懐疑的な人はよく「銀行はお金を作れるなら、なんで潰れるの? 潰れる前に自分でお金を作れば良いじゃん」と言います。こうした人は、おそらく民間銀行にとって預金が負債だということを理解していません。むしろ万年筆マネーだからこそ、民間銀行は取り付け騒ぎで潰れてしまいます。ある民間銀行に悪い噂が立って、一斉に預金の引き出し(預金→現金)要求が発生すると、対応する資産(現金+準備預金)が足りずに破綻してしまうというわけです。これがいわゆる取り付け騒ぎです。預金が銀行にとって資産ではなく負債だと分かれば、そもそもこういった疑問は生じません。

この点に関してもう1つ、上記の会計処理において、民間銀行の貸方は「預金という資産の減少」ではなく「預金という負債の発生」です。繰り返しになりますが、民間銀行は貸出において新たな預金(銀行にとっては負債)を作り出しているからです。一方、借りた人にとって預金もちろん資産なので、借り入れた瞬間から預金を使うことができます。

なお「新たなお金が生まれる」といっても、実際には上記の会計処理のとおり、銀行と借りた人それぞれに同額の債権と債務が発生するだけです。何も純資産が増えるというわけではなく、これは魔法でも何でもありません。この会計処理が信用創造の正体です。

そういうわけで、預金とは民間銀行が発行するお金であり、交換手段として使える特殊な負債です。この知識が投資に役立つのかどうか微妙なところですが、地球PFにとっては死活的に重要です。理由は前回の記事で書きましたので、ここでは繰り返しません。投資に直接は役立たなくても、こういう事実を知っておいて損はないかと思います。

 

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