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「国債発行は通貨発行」は本当か

最近Xで「国債発行は通貨発行」というポストをよく見かけます。その他に「国債残高は通貨発行の記録」というバージョンもあります。これらの命題に対して、賛成派と反対派が喧々諤々の議論を交わしています。概ね賛成派はMMT陣営、反対派は主流派経済学陣営、といったところだと思います。

実際はどうなのでしょうか。私の認識では、この命題は半分本当で半分嘘です。国債発行で新たなお金が発生するかどうかは、その国債を誰が引き受けるのか、によります。もし銀行が引き受ければ、確かに世の中のお金が増えます。一方、銀行以外の主体が引き受けても、世の中のお金の量は変わりません。

たとえば1970年代の日本は、国債発行残高がほとんどゼロでした。ではこの時代、日本円はほとんど無かったのでしょうか。そんな訳ありません。また、私は一時期「個人向け国債」を買っていました。この取引を通じて世の中のお金は増えたのでしょうか。もちろん増えていません。しっかりと私の預金が減りました。つまり、銀行以外の主体が国債を引き受けても世の中のお金は増えません。

しかし国債を銀行が引き受ければ話は別です。たとえば日銀が引き受ければ、新たなお金が生まれます。ただし、中央銀行国債を直接引き受けることは原則として禁止されています。中央銀行ではなく、民間銀行が引き受けても新たなお金が生まれます。なお、前者のお金はマネタリーベース、後者のお金はマネーストックです。両者はお金の種類が異なりますが、話が複雑になるのでその点は割愛します。いずれにしても、国債を銀行が引き受ければ新たなお金が発生します。

現在の通貨制度では、世の中のお金は銀行貸出によって生まれます(信用創造)。国債は政府の借金です。銀行が国債を引き受けるとは、要するに銀行が政府にお金を貸す、ということです。これは信用創造に他ならないので、新たなお金が発生するわけです。逆に銀行以外の主体は信用創造の機能が無いため、銀行以外が国債を引き受けても新たなお金は生まれません。この場合は単純にお金が移動するだけです。つまり私が個人向け国債を買っても、新たなお金は発生しないというわけです(参照:お金と労働と地球株 - 1-4. 利用者全体のお金)。

 

出典:お金と労働と地球株 - 1-4. 利用者全体のお金

 

ちなみに、MMTでは政府と中央銀行をくっつけて統合政府と見なします。その前提を許容すれば、確かに統合政府の国債発行は通貨発行と同じです。しかし、実際には統合政府ではありません。統合してしまって良いなら、そもそも中央銀行など必要ない、ということになります。現行制度上、中央銀行は政府から独立しています。そして通貨発行権を独占的に行使できるのは、政府ではなく銀行です。

国債発行は通貨発行」という表現は誤解を招きやすいと思います。まるで政府のみが通貨を発行できるかのような印象を与えますが、実際に通貨を発行しているのは銀行です。なお、政府も100円玉などの硬貨を発行していますが、これは極僅かです。また、銀行から借金することで通貨が生まれるのは事実ですが、これは何も政府に限った話ではありません。民間企業が融資を受けても新たなお金が生まれます。そういうわけで「国債発行は通貨発行」という命題は半分本当で半分嘘だと思います。

 

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