地球PF運用ブログ

2億円の「地球ポートフォリオ」で地球全体の資産を運用する氷河期リーマンのブログ

地球から来た男

夜ドラ「星新一の不思議な不思議な短編ドラマ」を視聴しています。昨日は第4回「地球から来た男」。少々考えさせられる話でした。

主人公は産業スパイ行為がバレて、テレポーテーション装置で地球外に追放されます。辿り着いた先は、地球に酷似した別の星のようです。その星は地球と同じ重力で、主人公は地球上と同じように呼吸ができます。また、その星には人間が居て、彼らとは日本語で会話ができます。見覚えのある街並みが広がっていて、飲食店では1,000円札が普通に使えます。もう明らかに地球、というか日本なんですけど、主人公は別の星だと信じ切っています。さらに、地球に居たときと同じ名前と容姿で通用し、同じ家族まで居ます。その「別の星」で、主人公はこれまでと一切変わらない生活を送りながら「いつか地球に帰りたい」と思い続けます。

さて、本作はこれだけの話なんですけど、現実に照らし合わせて、いくつか考えてしまうポイントがありました。第一に、現実の世界でも、ある思い込みを持った人の認識を変えることは難しいです。第二に、少数派が実は正しかったということが現実世界でも良くあります。第三に、この主人公のように、ちょっとしたきっかけで世界に対する認識がガラっと変わってしまうことが確かにあります。

まず、思い込みを持った人の認識を変えることが難しい点について。本作の主人公は、自分の家族と対面してもなお、今いる星が地球ではなく別の星であると信じて疑いません。もし私が主人公に「夜になったら空を見上げてみなよ、見慣れた星座があるでしょ」と言っても、ここが別の星だという彼の信念はおそらく変わらないでしょう。事実や常識を積み重ねても、ある思い込みを持った人の認識を変えられるとは限りません。

私の祖母と母は、とある宗教を信仰しています。マイナーな宗教です。私と弟は幼少の頃、その宗教の施設だったのか、「お山」と呼ばれる謎の場所に定期的に連れて行かれたり、食事の前に独特のお祈りを唱えたりしていました。もっとも、私たち兄弟はその後すっかり無宗教な人間に育ってしまいましたが。

母は以前、どこかで大地震等の災害が起こると、「本当はもっと酷いことになってた。私たちの祈りで何とかこの程度で食い止められた」と誇らしげに言っていました。この程度ならかわいいものですけど、ある日、「近々、地球全体の次元が上昇する。その時はあらゆる物質が光を放つから、それがサインよ」と言いました。「次元が上昇する」の意味も良く分からないですが、物質が光を放つことについて、思わず聞き返してしまいました。「いやいや、そんなこと物理的に有り得なくない? 光源なしで、この椅子とかお菓子から光が出るの?」と、野暮なことを聞いてしまいました。母は少々ムッとして、「頭でっかちのお前には分からないかもね、かわいそうに」と言ったものです。このように現実の世界でも、強い思い込みを持った人間は、物理的な事実や常識などでは認識を変えないものです。

次に、少数派が正しいこともある点について。本作では、主人公が地球を別の星だと思い込んでいるだけなのか、それとも本当に地球と酷似した別の星なのか、明らかにされません。99% 前者ですけど、後者の可能性もゼロではありません。常識では考えられない主張が実は正しかった、という点で真っ先に思い当たるのが、コペルニクスの地動説です。空の星が地球の周りを回っている、という当時の常識「天動説」に対して、コペルニクスは「動いているのは地球の方で、太陽の周りを回っている」という「地動説」を唱えました。この主張が世の中に事実として受け入れられるには、300年近くも待たなければなりませんでした。

地動説とは比較になりませんが、私はもう一つの例として「信用創造」を挙げたいと思います。信用創造とは銀行特有の機能で、貸出によって新たなお金を発生させる、というものです。私たちは一般に、銀行は誰かから集めたお金を企業等に貸している、と考えがちですが、これは事実と異なります。事実は、銀行は貸出によって新たなお金を生み出しています。これによって世の中のお金が増えます。実は信用創造の理解こそ、私が30代で1億円の財産を作った戦略の一丁目一番地です(参照:お金と労働と地球株 - 1. 現代のお金 - 1-1. お金が生まれるとき)。

今でこそ、MMT(現代貨幣理論)の普及を背景に、信用創造の理解も進んできました。しかし、私が「お金はどこで、どうやって生まれるんだろう」といったことに関心を持ったのは20年近くも前です。当時は(あるいは今でも)「銀行は集めたお金を貸す」というのが常識でした。信用創造に関する情報は少なく、経済学のテキストの説明さえ間違っていました。正しい情報源を探すのに大変苦労し、何が本当なのか良く分からなくなったものです。いずれにしても、ある時代に主流の常識や見解が必ずしも正しいとは限らず、かつて異端だった見解が後に正しかったと広く認識される、ということは良くあります。

最後に、ちょっとしたきっかけで世界に対する認識がガラっと変わってしまう点について。本作の主人公は、テレポーテーション装置で地球外に追放された(と思い込んだ)ことで、地球を別の星だと認識するようになってしまいました。私は20年近く前、入社して1年で鬱病になってしまい、しばらく休職しました。休職前の私は、微妙に意識が高かったのか、ビジネス本を良く読んでいました。「デキるビジネスマンが実践している10のほにゃらら」「実践!ほにゃらら的思考法」とか、そんな感じの本です。

それが休職となって時間ができたため、もう少し踏み込んで、お金、資本主義、会社、労働といったことを考えるようになりました。その中で、古代の奴隷と現代の会社員は何が同じで何が違うのだろうか、といった余計なことも考えました(参照:お金と労働と地球株 - 2. ピンハネシステム - 2-9. 奴隷と会社員)。

休職期間を終えて復職する頃には、もう会社や働き方に対する考え方がガラっと変わっていました。あらゆるビジネス本は「奴隷育成本」にしか見えなくなり、バカバカしくなって読まなくなりました。また、社内での出世にも興味が無くなりました。課長や部長に昇進しても「奴隷を管理する奴隷」になるだけで、それが目指すべきところだとは思えなくなりました。これは会社員として良くない副作用だったかもしれません。

「地球から来た男」は非常に短い話ですが、色々なことを思い出したり、考えたりしながら楽しく視聴しました。

 

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