前回に引き続き、クローズアップ現代「バーゲン・ジャパン 世界に買われる“安い日本”(2)労働力」を視聴しました。
ここ数十年、世界各国が経済成長している中で、日本だけが成長から取り残されています。そして日本は「安い国」となりました。前回は不動産にスポットを当てて、安くなった日本の不動産が世界中から買われている状況を特集していました。
今回のフォーカスは日本の「労働力」です。日本のモノは何でも安くなってしまったので、労働力もその例外ではない、ということですね。
近年、海外企業が続々と日本に進出しています。生産拠点を日本に構える外国企業も増えています。主な理由は、日本人の賃金が割安になってきたからです。
かつては日本が安い労働力を求めて外国、特にアジア各国に進出していました。しかしアジア各国では、ここ数十年で労働者の賃金が着実に上昇していきました。中国の人件費は、なんと10年で10倍にも膨れ上がったそうです。一方、日本の労働者の賃金は、周知のとおり長らくほとんど変わっていません。そのため、以前とは状況が逆転し、今では海外企業の方が日本に進出してくるようになりました。
海外企業から見ると、日本人の労働者は賃金が安いにもかかわらず、品質が高いそうです。つまり「割安」ということですね。また、日本に進出する海外企業にとっては、日本社会の安定性(治安の良さ)も魅力です。「日本は安全、日本人は割安」ということで、海外企業の日本進出の流れは今後も続きそうです。
さて、ここまでは前回の不動産編とほとんど同じ論理です。一向に経済成長しない日本が相対的に安くなり、その中に不動産も日本人(の賃金)も含まれる、というだけの話です。
一方で、一労働者として考えさせられる事例がありました。中国の電機メーカー「ハイアール」は現在、若い日本人技術者の採用に力を入れているそうです。未だ年功序列の雇用慣行が根強い日本では若年層の賃金がより安く、より海外企業にとって「お買い得」だからです。日本企業からハイアールに転職した若い女性は、「ここ(ハイアール)では若手にもチャンスがある。前の企業には無かった」とインタビューに答えていました。彼女は日本企業で燻っているよりも、ずっと良い選択をしたようです。
私はもう若くないですが、もし若ければ日本企業よりも外資系企業で働くことを志向したかもしれません。だって、単純に外資の方が給料が高くて、やりがいもチャンスも大きいんですからね。日本企業はこのままで大丈夫なのかと心配になりました。これでは、やる気のある若い社員はどんどん外資系企業に移ってしまうと思います。
スタジオではゲストが、この円安を利用して「Made in Japan」を海外に売り込むべき、と前向きなことを言っていました。そうできれば良いですけど、今の日本にその力が残っているのでしょうか。かつて「Made in Japan」といえば、それは「高品質」の代名詞として世界中で通用しました。この「ブランド力」が今でも顕在なのか、よく分かりません。逆に「安かろう悪かろう」的な存在だった中国製の商品は、今では品質的にも遜色ないレベルになっている気がします。
2夜連続で「バーゲン・ジャパン」を視聴して、これまで何となく目を反らしてきた現実を突き付けられた気がしますね。確かに、ここ30年ほどの日本の落ちぶれっぷりは凄まじいです。いや、日本が落ちたというより、世界が成長している中で日本だけがずっと止まっていました。いずれにしても、今日の日本が相対的にバーゲンであることは残念ながら間違い無さそうです。日本が再び経済大国として復活する日は来るのでしょうか。
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