セミリタイアとは、ある程度の規模の資産を構築した上で早期退職し、その後は負荷の軽い労働で生きていく、といった生活スタイルだと思います。資産運用だけで生きていく完全リタイアよりも構築すべき資産が少なくて済むので、その分ハードルが低くなります。セミリタイアを目指して投資されている方も多いでしょう。私も基本的に労働が嫌なので、魅力的なライフスタイルだと思います。
しかし今の日本で、セミリタイアを目指すのは危険な気がします。これは良くあるFIRE批判ではありません。むしろ逆で、もし会社を辞めるのであればFIRE、つまり経済的独立を達成した上での完全リタイアでなければ危ないのではないか、ということです。
セミリタイアの典型的な姿は次のような感じだと思います。株式を中心として資産を築き上げて、配当金が月に10~20万円ほど入るようになりました。これだけあれば、生活費を全て賄えるほどではありませんが、もうフルタイムで働く必要はありません。そこで会社を退職して、今後は配当金+週に数回程度のアルバイトで生活していこう、といったイメージです。具体的な金額は個々人の状況によって異なりますが、資産収入と軽い労働収入で生活していく、といった点は共通していると思います。
少し用語を整理しておくと、ここでは同じ軽労働をしている人であっても、それが必須である場合はセミリタイア、そうでない場合はFIREと見なしています。つまりFIREした人は、働かざるを得ないのではなく、働く必要は無い上で好きで働いているだけ、という解釈です。
さて、セミリタイアに関して不安なことが2点あります。
第一に、配当金の安定性です。リーマンショックのような暴落が来て減配が発生しまくると、生活が成り立たなくなるかもしれません。ただし、これはセミリタイアに限らず、完全リタイアであっても被るリスクです。資産の規模をかなり大きくするか、配当が堅いポートフォリオを組んでおく必要がありそうです。
第二に、こちらの方が重要ですが、日本では雇用の流動性が著しく低いです。会社を辞めて数年後に上記のような経済ショックが訪れて、アルバイトでは生活が苦しくなってきたとします。本人は「仕方ない、もう一度サラリーマンやるか」と思っても、日本の会社は数年間フリーターやアルバイトだった人の再就職に対してまだまだ冷たいです。就職できたとしても、以前よりも給料が相当に低くなる可能性が大きいです。この傾向は今後変わっていくと思いますが、それがいつになるのか分かりません。
その他、「大きな病気にかかってしまったら」「巨額の損害賠償を負うことになったら」等々、不安なことを考え始めたらキリがありませんが、それらは別にセミリタイア特有の問題では無いので割愛します。通常セミリタイアにおいて、お金に関する主だった懸念は上記の2点くらいだと思います。とりわけ問題なのが2点目です。日本の雇用慣行の問題なので、本人の努力だけでは解決できません。
これらの懸念を払拭するには、セミリタイアではなく、最初から完全リタイアできるだけの資産を構築することです。そうすれば、働きたければ働けば良いし、働き口がなくても、あるいは働く気がなくても、資産収入だけで食べていけるので問題ありません。要するに、セミリタイアではなくFIREを目指すべきです。大きな資産を作るのは大変ですが、セミリタイアできるほどの資産を作れるのであれば、もう少し頑張って完全リタイアできるレベルまで資産を大きくした方が良いです。
今の日本の状況では、中途半端にセミリタイアするのは少々危ないと思います。
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