NHKスペシャル「若者を狙う “闇の錬金術” ～調査報告 借金投資の罠～」を視聴しました。近年、若者の間で将来不安から投資への関心が高まっています。20～30代の5人に1人が何らかの投資をしているそうです。一方で、若者をターゲットにした投資トラブルも相次いでいます。昨年度の消費相談センターへの相談件数3353件のうち、10～20代の相談が48.5%を占めていたそうです。番組では業者の手口や具体的な被害事例にフォーカスしていました。
番組で中心的に取り上げていたのが「ジュビリーエース」という業者。投資セミナー等で若者を集め、650億円もの大金を集めたそうです。投資の内容は、AIで暗号資産を運用して海外のスポーツに金を賭ける、という怪しさ満点のものです。「リスクはゼロ」「確実な利益」などと謳っていました。なお、幹部らの多くが逮捕されました。
ある派遣社員の男性は、ジュビリーエースの指南で複数の消費者金融から借金を重ね、合計300万円をメンバーに預けました。何も大儲けしたいわけではなく、仕事がつらくても「こんだけお金があるし大丈夫やろう」という気持ちが欲しかったそうです。半年後、専用サイト上では300万円が540万円に増えていました。しかし、2か月後に出金停止の通知を受け、3年経った今でも1円も出金できていません。残ったのは消費者金融の借金だけです。
また、ある社会人1年目の女性は、ジュビリーエースの詐欺によって自殺してしまいました。女性はもともと約400万円の奨学金返済を抱えており、母親が保証人になっていました。詐欺にあったきっかけは、大学時代の親しい友人からジュビリーエースのメンバーを紹介されたことです。やはりメンバーの指示で、3社の消費者金融から合計150万円を借りて業者に預けます。その後、ジュビリーエースが怪しい会社であるという評判を知るも、時すでに遅しで鬱病になってしまいます。友人やメンバーに返済を迫るも叶わず、母親に遺書を残して自殺してしました。何とも痛ましいです。
投資詐欺のもう1つの柱が「マルチ商法」です。会員を集めれば集めるだけ紹介料を貰えるという、ありがちなやつです。上記の女性は、友人に対して自分の紹介料だけでも返してくれと連絡していました。しかし、その友人もまた借金を抱えており、複数の知り合いをジュビリーエースに勧誘している状態でした。闇の深さが窺えます。現在、女性の母親が民事訴訟を起こし、友人、メンバー、最高幹部に賠償を求めているそうです。
マルチ商法については、かつて私の家族も嵌ってしまったことがあるので他人事とは思えません。
ただし現代的な特徴として、多くの若者がSNSを通じて幅広く友人や知人を勧誘します。また、投資詐欺の場合は物理的な商品がないため「モノなしマルチ商法」と呼ばれるそうです。モノがある従来のマルチ商法よりも一般に金額が大きく、従って被害額も大きくなりがちです。マルチの基本的な仕組みは昔ながらですけど、ある意味で悪い方向に進化しています。
番組では投資詐欺から身を守るために、当該業者が金融商品取引業者として金融庁に登録されているか確認することを推奨していました。それはもっともなんですけど、それ以前に、あり得ない高利率やマルチ商法に対して「怪しい」と感じる嗅覚が必要ではないかと思いました。
たとえば上記のケースで女性は、1万ドルの投資で毎月8%の配当を得られる、という説明を信じてしまいました。毎年ではなく毎月で8%です。これでは元本が毎年2倍以上に増えていく計算になりますが、そのような投資は通常考えられません。仮に月利が1%という控え目な数字だったとしても、年利換算では10%を優に超えます。そもそも「月利」を謳う時点で、個人的にはもう詐欺だと疑った方が良いと思います。
気を付けたいですね。以前もNHKが投資詐欺に関して放送していました。
公共放送として非常に有意義だと思います。受信料を払っている甲斐があるというものです。今後も注意喚起として定期的に取り上げてほしいテーマです。
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